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Z97次|開業20年目を迎えた香港直通列車の正念場

 1997年5月、香港返還直前の2カ月前に誕生した直通列車は、中国大陸の北京・上海と九龍半島にある紅磡駅を結ぶ当時としてはインパクトのある列車だった。運賃収入よりもそれ以上に香港が中国に返還され、遠く離れた地域から香港まで直通列車が乗り入れできるようになった事実を世界に広く知らしめた。


 開業当時、直通列車では25K系客車を使用した18両編成のうち、軟臥車両4両、外国人乗客の利用を見越したシャワー室を設けた高級軟臥車1両を連結した豪華な編成だった。当時のダイヤは、朝の7時台に北京西駅を発車し、13時10分に紅磡駅に到着する31時間の長旅だった。同時期に運行を開始した姉妹列車の99/100次(上海駅〜紅磡駅)とは隔日で運行を行なっており、香港に行かない日は広州東駅止まりだった。ダイヤは97/98次、99/100次とも紅磡駅の到着と発車が同一の香港中心のダイヤとなっており、これは20年経った今でも続いている。


 登場から20年の間、直通列車を取り巻く環境は目まぐるしく変化していった。97年よりスタートした相次ぐダイヤ改正(速度向上)により、列車の平均速度は徐々に向上。また、00年にはT特快、そして14年末にはZ特快へとランクを格上げしており、ますます花形列車の風格を帯びてきた。08年1月、これまで使用していた25系客車から25T系客車に置き換わり、高級軟臥ではシャワー室に代わり個室内にトイレが設置された。さらに15年末までに客車の色が全部緑色に塗り換えられた衝撃は記憶に新しい。


 切符の買い方は中国国内列車とは異なり特殊なケースとなっている。現在、12306などのオンライン販売では、香港までの直通列車の切符は買えず、北京西駅また上海駅の切符売場の窓口でしか直接購入できない。また、途中停車する駅からは香港行きの切符は買えず乗車もできない。逆に香港側では始発駅の紅磡駅とMTR社が契約している代理店からしか買えない。切符のオンライン販売が普及し、切符購入がぐっと便利になったにもかかわらず、直通列車はこの流れに取り残されてしまっている。

 もうひとつの特殊なケースとして、直通列車では北京西駅と上海駅、そして紅磡駅に設けられた出入境聯検庁でパスポートに出境のスタンプを押して出境してから乗車するという仕組みになっている。97年から03年までは広東省東莞市の常平駅で1時間ほど停車をして出入境手続きを行なっていたが、03年以降は始発駅が出境扱いとなってしまい、もともと途中下車できなかったが、さらに途中駅のホームに降り立つこともできなくなった。実質24時間缶詰生活である。

 利点を挙げれば、この直通列車は香港側で鉄道を運営するMTR社の料金の適用を受けており、切符料金は香港ドル価格を人民元に換算した金額で、17年は9月から年度末まで割引も実施している。つまり中国国内列車よりも安いのだ。例えば、1192香港ドルの高級軟臥は10%オフの1072香港ドルとなる。これを人民元に換算すると912元。同じ列車で広州東駅行きの高級軟臥下段料金は1450元もするため、紅磡駅行きにすると広州経由で香港に向かうより俄然お得になる。直通列車の場合、寝台の軟臥、高級軟臥上下段の価格は同じだ。


 香港へ向かうZ97次の出発は北京西駅の1番ホーム。荷物車の1号車から食堂車の11号車までの範囲は出境扱いとなっている。一方12号車から18号車までは広州東駅止まりとなる国内列車扱いになるため、11号車と12号車の間には柵が設けられ、出境乗客と国内乗客の移動は厳しく制限される。車内でも当然香港止まりと広州止まりの客車間では自由な行き来はできない。


 今回は、ゆったり寛げる高級軟臥に乗車。内装は、ちょっと落ち着いた白い木目調のパネルで統一され、奥行き80㎝の2段ベッドとソファが出迎えてくれる。個室内にはトイレも設けられているため、朝のトイレ待ちを心配する必要がない。個室内のテーブル下には電源が設けられており、携帯電話やパソコンなどモバイル機器が充電できる。


 08年度1月まで使用された25K系客車の高級軟臥は、もう少し色の濃い木目調のパネルを使っていた。ソファーとトイレはなく、上段ベッドを取り除いた下段にベッドが2つあった。01年に乗車した当時の価格は、人民元安香港ドル高といった為替相場の背景もあり1311元と割高だった。シャワー室は実際使用したところ水圧が弱くチョロチョロ程度の水しか出なかったことは覚えている。乗務員も普通に使っており、日本製の入浴剤で書かれている日本語の意味が分からないと聞かれことがあった。


 12時40分、Z97次は北京西駅を発車、しばらく沿線景色は畑と防風林が続く。車内の乗客は香港人、中国人のみならず欧米系、アフリカ系といった顔ぶれだった。人種のるつぼと呼ばれる国際都市・香港の特徴が、直通列車内でも縮図化されているということを改めて思い知った。

 

 走りはじめて約6時間、直通列車はすでに河南省を走っていた。大河の黄河を渡り20分ほど走ると次の停車駅の鄭州駅に到着。しかし、ドアは開いていても乗務員がホームに出ることを許してくれない。そうだった、我々はすでに出国扱いを受けている身分だから香港に到着するまでは車内に缶詰にされるしかない。一国二制度のなかで走る特殊な列車という性格を考えれば仕方がない。幸い車内販売もあるし、食堂車もあるので飢えに困ることはない。食堂車では7〜8種類の広東料理がご飯、スープ付きでセットで売られており、価格は50元前後。味は…まあまあだ。


 翌日直通列車は10時過ぎに広東省の広州東駅に到着。1時間ほど停車し、その間香港行きの車両が分割された。1号車から食堂車の11両という短編成で香港に向かい、香港から戻ってくるZ98次列車は同駅で再び切り離した車両を併結する。短編成の理由は、香港MTR東鉄線を走る電車の編成とホームの長さに合わせているため。同路線のホームの長さは12両分しかないため、直通列車も機関車を含め12両編成に合わせて運行している。


 広州から深圳まで1時間半ほど走る間、南国風景と工業地帯が織り混ざった景色が目に入る。大陸南端の深圳が近づくと、直通列車は速度を落としながら深圳駅を通過し、ゆっくり深圳河を渡り香港エリアに入る。直後に現れる香港側の羅湖駅にはMTRの電車が停車している。

 

 頭の中では分かっているが、やはり一国二制度は摩訶不思議。右側通行が左側通行になり、言語が中国語の普通語から広東語に変わり、漢字は簡体字から繁体字に変わり、お金は人民元から香港ドルに変わり、広州以上に日本車を多く見かけるようになる。そんな制度が創りだす世界をよそに、列車は高層ビル群の隙間を抜けていく。MTR東鉄線の通勤電車が走る路線を走るため、平均速度は50㎞前後と恐ろしく遅い。そしてオンタイムの13時1分に紅磡駅に到着した。24時間の長旅が終わった瞬間だ。紅磡駅のイミグレで90日有効の入境カードをもらい出口を出れば、晴れて香港に入ったことになる。


 ところで、今年で20周年の節目を迎えた直通列車のスケジュールだが、来年秋以降はどうなるかは今のところは不透明。というのも18年の秋以降は深圳と香港間を結ぶ高速鉄道が開業し、出入境手続きエリアは香港側の西九龍駅に設けられる。

 現在報道されている出入境方法だと、西九龍駅は地下4階で構成されており、地下1階は香港管轄で地下4階の鉄道ホームは中国管轄。地下2階と3階は出入境エリアになり、このフロアは中国と香港がそれぞれ管理をする。報道通りに実施されれば、これまでの一国二制度に基づいた直通列車の運行が変わることは容易に想像がつく。


 西九龍駅のホームが中国管轄になれば、隔日運行で制約されていた香港への長距離列車の乗り入れが毎日可能となり、北京や上海発以外でも中国各地から香港に向かう高速鉄道が次々と登場する。切符も12306で買えるようになり、今まで以上に香港へ行きやすくなる。しかも、高速列車や寝台動車組なら北京や上海発でも8時間から11時間以内に香港に到着できることも夢ではない。

 そういった状況のなかで、運行日時が制限され、乗車時間は高速鉄道よりも長く、始発駅でしか切符が買えない特殊事情を引きずっている直通列車に対し、来年秋以降の需要があるかどうかと考えるとかなり厳しい。逆に香港まで乗り入れる高速列車が増えれば、これまで直通列車として活躍してきたZ97/98次とZ99/100次は、香港行き分が廃止になり、国内専用の長距離列車になる可能性が高い。


 旅情を楽しむ移動から効率を上げるための移動へ思考がスライドしていくなか、20年間直通運転を忠実にこなしてきた直通列車の将来の見通しは暗い。逆にお得な切符料金で一国二制度という縛りのある直通列車に乗るなら今しかないということを覚えておくべきだろう。



データ

Z97次 

広州鉄路局集団公司広九客運段

区間:北京西〜紅磡

時間:12時40分〜翌13時01分

乗車:23時間21分

距離:2475㎞

料金:硬臥下段601香港ドル、軟臥934香港ドル、高級軟臥1191香港ドル


画像説明

画像1 広州東駅到着直前のZ97次。牽引機関車は韶山9G型で北京西〜広州東間を1台通しで牽引している


画像2 1000元以下で買える高級軟臥。ベッドにソファー、個室トイレ、充電用の電源などの設備がある


画像3 北京西駅と広州東駅、そして九龍駅を結ぶ列車の行き先表(サボ)で香港側の実際の終点駅は紅磡駅。写真は2010年のもので、当時はまだT特快だった


画像4 食堂車の車内風景。広州東駅止まりの乗客は利用できない


画像5 夕食は鶏肉と豆と野菜を炒めた宮爆鶏丁だった


画像6 翌朝、列車は北江という大河の脇を快走している。北江は、珠江の河口に流れており、途中の流域ではこの川の水を使った多くの産業がある


画像7 直通列車は広州東駅でも乗客はホームに降り立つことが許されず、缶詰状態になっている


画像8 Z97次、Z99次ともに広州東駅から紅磡駅間は、韶山8型が牽引する 。国内列車にあたる7両分が切り離され、広州東車両基地に回送。当日夕方、北京(Z98次)と上海(Z100次)にそれぞれ戻る列車に再度併結する